研究室のイベント
2025年7月18日
- 2025年度
パワエレ学会見学会・評議員会・定例研究会@長岡に参加しました!
4月に引き続き,7/18,19(金, 土)に新潟県は長岡市で開催されたパワエレ学会のイベントに出席しました。18日は年1回開催される見学会に,19日は恒例の評議員会と定例研究会が催されました。今回のイベントは私が担当評議員のひとりとして定例研究会の一般講演で司会を仰せつかっておりましたので,長岡という遠方でしたが現地まで行って参加してまいりました。
見学会は長岡駅からバスツアーという形式で,下記の研究所・企業様を訪問しました。
- 防災科学技術研究所 雪氷防災研究センター様
- 長岡パワーエレクトロニクス株式会社様
- 長岡モーターディベロップメント株式会社様
雪氷防災研究センター様(雪氷研)は,日本海側特有の豪雪地帯である新潟において昭和38年の甚大な豪雪(38豪雪)を契機に設立され,降雪や吹雪を再現する世界有数の大型実験施設を駆使し雪崩のメカニズム解明や着雪防止技術といった最先端の研究が日々進められております。様々見学させていただきましたが中でも屋外に毎年の積雪量を実際の高さで示したひもが印象的でした。黄色のひもが雪氷研の積雪量ですが,2022年では2m弱ぐらいで私の全身がすっぽり埋まるくらいでしょうか。私は母方の実家が富山県でして,幼いころに祖母が雪で滑り台を作ってくれていた楽しい思い出がありますが,これを見ると雪国の方々の日々のご苦労を思うばかりでした。また,雪氷研には最低-30℃に設定できる低温室があり,そこで過冷却現象の体験もさせていただきました。冬の時期の冷たい雨は雲の中で上昇と下降を繰り返し,この過冷却現象が発生して大きな氷の塊,すなわち「ひょう」となるそうです。
雪氷研から長岡技術科学大学(長岡技科大)すぐ横のながおか新産業創造センターに向かいまして,長岡パワーエレクトロニクス株式会社様(NPE),長岡モータディベロップメント様(NMD)にお邪魔いたしました。どちらも長岡技科大発のパワエレ系ベンチャー企業であり,役員全員が博士号を保有しているという点は会社のアピールポイントだそうです。
NPEでは,汎用的なパワエレシステムの実験キットであるパワエレトレーナーのデモンストレーションをいただきました。こちらの製品はすでに我々もお世話になっているところでして,モータドライブの学生実験で活用させていただいております。パワエレトレーナーは汎用三相インバータ×2と制御回路,マイコンボードがすでに完成された状態で納入され,オプションで小型の永久磁石同期モータベンチもつきます。さらにパワエレシミュレータ・PLECSでシミュレーションできる制御・モータモデルが同梱されており,この制御モデルをオートコード生成によりCコードを生成し,パワエレトレーナーのマイコンに書き込むことができるようになっています。これにより,シミュレーションでの基礎検討から実機実験までスムーズに実施できるものとなっております。また学生実験では10数人の学生を同時に対応しますので安全性も重要ですが,パワエレトレーナーには過電流等保護機能も実装されているため安心して使用できます。近年の本校における電気電子系の学生が学ぶカリキュラムは非常に多岐にわたっており,また学生が実験・研究できる時間も圧迫されている現状ですが,パワエレ知識がほとんどない学生でも,手軽にパワエレに触れることができるということは分野の裾野を広げる観点から大変素晴らしいことと思います。 NMDではモータの開発および評価の現場を見学させていただきました。NMDではパワエレトレーナーの小型モータから100kW級の大型モータまで幅広く対応でき,またPMモータだけでなく,SRM (Switched Reluctance Motor)を開発することもできるとのことで,大手の電機メーカに劣らない技術力をお持ちであることがよくわかりました。
見学会が終わると,今回の懇親会は評議員会・定例研究会の前日夜にあり,私も参加しました。長岡でパワエレ分野の方々が懇親会を開くとなればおなじみ,魚仙で催され,海鮮や名物の油揚げなど長岡の特産品に舌鼓を打っておりました。どれも大変おいしいものばかりでしたが,私個人としては突き出しで出てきた「たこぶつ」が非常にみずみずしく,最も印象に残りました。乾さんも今回懇親会に参加しておりましたが,パワエレの諸先生方とつながりを作ることができたようで何よりと思います。
さて,翌日の評議員会では今後開催される定例研究会等の企画を主として熱心な議論が交わされました。特に,毎年パワエレの最前線で活躍される研究者・エンジニアの方をお招きして開催されている専門講習会についての参加費について,近年は物価が上昇してきていることもありその値上げが活発に議論されました。また,パワエレ学会は学生や企業の若手研究者を中心とした若手幹事がおり,彼らの処遇についても議論がありました。彼らは12月に開催される若手のための研究会に向けて企画や運営に関わり,定期的に打ち合わせをしています。聞くところによるとこの打ち合わせは対面での参加を推奨されているようであり,そうであれば旅費の支給をいただけないかとの若手幹事からの申し出があったようです。パワエレ学会は全国規模ではないにしても大阪公立大学,神戸市立高専,舞鶴高専,長岡技科大の関係者も携わっており,割と広いエリアに展開しています。学会関連の業務は手弁当というのが暗黙のルールのようで,評議員の方々からは様々なご意見もありました。いずれにせよ一般論として,若手の学生・エンジニアの方々が将来分野の発展に寄与することを志し,本学会に意欲的に協力してもらえるようなあり方を目指すことが望ましいのではないかと思います。
今回の定例研究会では,招待講演2件,一般講演2件,特別企画1件ありました。今回一般講演の司会を務めて分かったことですが,タイムスケジュール管理やオンラインで接続トラブルがないかの確認,質疑応答での指名,また質問がなかった場合に備えての質問洗い出しなど円滑な進行のために様々なことに気を配らねばならないというのは何とも気が抜けない時間を過ごしました。
招待講演では,1件目に雪氷防災研究センターの中村様より,近年の雪氷災害の特徴とセンシングとシミュレーションの融合による雪氷災害リスク情報の創出研究に関するご講演をいただきました。2件目は長岡技術科学大学の日下先生より,ワイヤレス給電システムの大電力化に関するご講演をいただきました。一般講演では1件目は立命館大学より大容量に適した双方向絶縁型DC/DCコンバータに関して,2件目は近畿大学よりGaNモジュールを用いた1MHzハードスイッチング可能なハーフブリッジ回路の製作に関してのご発表でありました。特別企画では新潟電子工業株式会社の喜多村様より,事業および主力製品と技術についてご講演がありました。
ご登壇者,聴講者はじめ関係者の皆さま方には多大なご協力いただき,つつがなくとり行うことができました。誠にありがとうございました。
次回の定例研究会は10月4日(土)同志社大学京田辺キャンパスにて開催されます。今年の夏は例年にも増して大変厳しい暑さが続いております。皆様も体調管理には十分にご留意ください。雪氷防災研究センターでの学びを胸に私も涼しい冬の訪れを心待ちにしつつ,日々精進してまいります。
【榎倉】
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