研究室のイベント

2026年8月31日

  • 2026年度

電気学会産業応用部門大会@岡山に参加しました

9月に入り,残暑と秋雨が交錯する日々が続いておりますが,皆様いかがお過ごしでしょうか。

先般,私はじめ研究室の教員3名,本科生2名は岡山大学にて開催の2026年電気学会産業応用部門大会に参加するため,前後泊を含めた長丁場の日程で岡山県岡山市に滞在して参りました。滞在期間ではしばしば雨模様であり,かつて足を運んだ名所へ再び赴くことは叶いませんでしたが,駅周辺には岡山大学や岡山理科大学が居を構え,街全体が若い学生たちの活気に満ち溢れている空気を肌で心地よく感じた次第です。

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さて,今回の学会では,我が国の産業競争力を底支えする最先端の研究発表に数多く触れることができました。産業応用部門大会では電気電子分野で幅広いテーマが活発に議論されておるなかで,モータ制御を専門とする私の目から見た所感となりますが,会場では,モーションコントロール,モータ電流のオーバーサンプリング,デュアルインバータ関連などが特に極めて高度で野心的な議論が交わされておりました。モーションコントロールで申しますと,中国では先日,ヒューマノイドロボットの競技会であるWorld Humanoid Robot Games開催され,そこにおいてロボティクス技術のめざましい発展を見せつけられました。これらはいずれも次世代モビリティや産業機器の精密な制御,ひいては我が国のエネルギー戦略に直結する,まさに国力を左右する要素技術であります。

なお,本研究室からは,客員研究員である乾さんが,下記の通り発表されました。

  • 1-44 (R1-10): 三相PWM整流回路における寄生成分を考慮した数理モデルの提案,乾伊織・榎倉浩志・川上太知(大阪公立大学工業高等専門学校)・豊留慎也・佐々木亮一・有澤浩一(三菱電機株式会社)

昨年度の大会ではポスター発表をされておりましたが,今回は初めての一般講演(オーラル形式)での発表でありました。私も会場の後方から拝聴しておりましたが,ことさら気負う様子もなく,非常に自然体で発表を終えられました。質疑応答の場においても,決して取り繕うことなく率直な言葉でやり取りをしておられ,すっかり安心して見守ることができました。

こうした若き研究者が,実践の場を通じて着実に経験を積み,逞しく成長していく姿を目の当たりにするのは,何よりも嬉しく,心強いことであります。

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さて,学会期間中は連日のように懇親会が開かれておりましたが,それぞれに趣が異なり,いずれも現場の生の声に触れる大変有意義な時間となりました。

まず,大会前日および1日目の夜は,大学や高専から集まった教員,そして学生の皆さんとの小規模な交流の場でありました。杯を交わす中,大学生諸君の若く溌溂としたエネルギーに大いに刺激を受けた次第です。前日には本校専攻科から筑波大学に進学された佐々木壮太さん,竹中敬士さんと久々の再開で高専在籍中の思い出を語らうとともに,竹中さんの現在研究室を同じくする同級生の方とも親睦を深めました。1日目はたびたびお世話になっておりますMathworksの鎌谷さんの呼びかけにより開催され,近畿大学 南先生,米子高専 石倉先生に加え,両先生の研究室に所属する学生の皆さんと交流いたしました。

彼らとの対話を通じて改めて実感したのは,大学という場における「縦のつながり」の強みであります。学部4年生から大学院修士課程に至るまで,研究室という枠組みの中で一貫して研究テーマを探求し,また企業との共同研究プロジェクトも機動的に構築できる。実に恵まれた環境がそこにはあります。ひるがえって,我が国の実践的技術者教育の要である高等専門学校に目を向けますと,私が身を置く本校においては,私は本来あるべきと考える専攻科が昨年度をもって廃止され,現在は本科のみという状況に置かれております。このままでは腰を据えた長期的な研究や産学連携の推進において,構造的な後れを取ることは避けられません。この厳しい現状をいかにして打破し,次代を担う高専生たちに十分な研究・教育環境を担保していくのか。これは私ども本校の教員に突きつけられた極めて重い課題であると痛感させられた夜でもありました。

うってかわって大会2日目は,学会主催の大規模な公式懇親会でありました。ここでも膝を交えて現場の技術者・研究者たちと語り合う貴重な機会を得ました。その中で特に印象に残りますのは,以前の国際会議で知り合った研究者からのご紹介で,私が予てより強い関心を抱きながらも未だ手を出せずにいた SRM(スイッチトリラクタンスモータ)の電流ベクトル制御に取り組んでおられる方との出会いがありました。まさに我が意を得たりと申しますか,これから切り拓きたいと願っていた道を先陣を切って進んでおられる方と直接言葉を交わすことができ,大いに刺激を受けた次第です。またこの場では,この地に伝わる「備中神楽」の勇壮な舞を拝見いたしました。江戸時代から続く伝統文化の重みに思いを馳せつつ,地元で採れた見事なシャインマスカットに舌鼓を打ちました。このような質の高い農産物を生み出す地方のポテンシャルの高さを改めて思い知らされます。

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大会3日目の夜には,翌日に控えた,長岡技術科学大学の伊東先生が主催する高専パワエレフォーラムに向けた懇親会が催され,有識者の方々と前哨戦とも言える意見交換を行いました。この回は産業応用部門大会と全国大会に併せて開催されておりまして,産業応用では高専のパワエレ分野に携わる教員の教育現場での近況や課題等情報交換の場という位置づけとなっております。そして迎えた大会終了後のフォーラム本番では,非常に重い課題が突きつけられることとなります。

特に私が強い危機感を覚えたのは,昨今,生成AIの技術が台頭してきておりますが,学校教育においては,質の高い生成AIツールに「課金できるか否か」で,すでに若者たちの間に教育格差が生じ始めているという指摘です。教育の機会均等こそは,国家の百年の大計であります。経済的な理由で最新のツールに触れられない層が取り残されるような社会は決して好ましいものではありません。いかにして教育環境のボトムアップを図るかという,極めて重い課題であります。

さらに議論の中で,今後新たな高専が乱立するという話題も上りました。即戦力となる高度な理系人材を求める企業や社会のニーズは,私とて痛いほど理解しております。しかしながら我が国で学ぶべき若者の絶対数が減り続ける中で考えさせられるものがございます。現場の技術者たちの熱意に応え,未来を担う若者たちに平等で適切な教育環境を用意すること,今回の岡山滞在は私にとって多くの宿題を持ち帰る極めて有意義な時間となりました。

またそんななか乾さんと学生ら2名は岡山での岡山城や後楽園など観光を満喫されていたとのことで,非常に何よりと思います。学生にとっての学会とは,研究成果を聴講して勉強したり,外部の方々との交流を深めるとともに,合間の時間で地元の名所を巡ったり食文化を堪能するところに大きなインセンティブがあるのだと思います。さればこそ,教員は,単に研究の指導や成果の追求ばかりを求めるのではなく,学生たちのモチベーションを汲み取り,学びと人間的成長の双方を後押しする環境をいかに整えていくか,それこそが我々教員の役割のひとつと考えた次第です。

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季節の変わり目,夏の疲れが出やすい時期でもあります。皆様におかれましても,どうかご自愛くださいませ。

【榎倉】


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